15年目の小さな試練
 ハルとそんなやり取りをした後、部屋にやって来たお袋からも言われてしまった。

「あなた、本当に疲れがたまっていたのね」

 体温は38度ちょうど。やっぱり下がらない。

「いや、5月のインフルウィルスのたちが悪いだけだよね?」

「いやね。本当にたちが悪かったら、この高熱でこんなに元気な訳がないじゃない」

「そう?」

「そうよ~。インフルエンザって、本当に辛いもの。関節は痛いし、寝ていても起きていても、身の置き所がない感じだったわ」

 お袋が眉をひそめて、とっても嫌そうに経験談を語る。

「あれ? 薬は?」

「最初、ただの風邪だと思ってたのよね。病院に行ったときには薬が効く時期が終わっちゃってたのよ」

「ああ~、それはしんどそう」

「本当につらかったわ。あれ以来、とにかくおかしいと思ったら検査してもらうようになったもの」

 それを考えたら、オレだって検査してもらって正解だったんだろう。こんな時期だし、関節痛もなかったし、普通なら何もせずに寝てるところだった。

「それにしても、あなた、本当に体力あるのね。だけど、やっぱり顔色が良くないわよ?」

「そう?」

「ええ。食事だってちゃんと食べてはいるけど、家を出るまではもっと食べていたし」
 
「そりゃ寝てばっかで運動も何もしてないから」

 動かないから、そう腹も減らないし、おかわりまではしないよな。

「晃太が笑ってたわよ」

「え? 何を?」

「叶太の頭の中は、陽菜ちゃん一色だって。すべての道は陽菜ちゃんに通じてるって」

「ああ、そりゃそうだよね?」

 頭の中はいつだってハルで埋め尽くされてるし。

 いつもなら笑われるところなのに、今日に限って、お袋は小さくため息を吐いた。

「私もね、それがあなたの通常運転だって分かってるわよ? だけど、あえて親として言わせてもらうわね?」

 お袋はそこで一息ついて、オレの顔を真顔で見つめた。
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