15年目の小さな試練
「四六時中、気を張りすぎじゃないかしら?」
「……ん?」
「二十四時間、365日体制で、陽菜ちゃんの身体を気にしてるでしょう?」
「もちろん」
そりゃそうだ。
ハルの心臓は、去年の手術で大分良くなったけど、そうは言っても走れるようになったわけでも、薬が必要ない状態になったわけでもない。ただ、不整脈の数が減って、心臓の動きが少し良くなって、幾らか身体が楽になったくらいだ。
今でもしょっちゅう熱を出すし、胃も壊すし、季節の変わり目も暑いときも寒いときも心臓の調子は悪くなる。熱の出始めは夜中のことも多いし、結婚の後押しをしてくれた夜中の不調だっていつ来るか分からない。
だから、眠っている時だって、ハルの様子を気にかけているのは当たり前だ。
学校でだって、放っておくと誰かに合わせて階段を上り下りしたりするし、誰かの歩調に合わせてしまう。授業中に具合が悪くなっても、ギリギリまで我慢しようとする。
兄貴からの報告を聞いていると、案の定、兄貴がいなかったら、無理をしていただろうシーンが満載だった。
「叶太」
「……あ、うん」
「あなたが今、何を考えていたのか分かる気がするけどね、それ、病気の時くらいやめなさい」
「え!?」
「気が休まってないから、いつまで経っても熱が下がらないのよ?」
「まさか」
「あら、じゃあ、こんなに体力があるあなたが、なんでこうも治らないの?」
「だから、インフルウィルスが……」
「はい却下。ウィルスのせいにしない。疲れがそれだけたまってるから、心も身体も休めなさいって、身体からのサインです」
お袋は左手を腰に当て、右手でオレのおでこのジェルシートをコツンと叩いた。
「結婚前はこんなこと一度もなかったでしょう?」
「……うん」
何年かに一度、風邪引いて自主的にハルの側に寄らない日もあったけど、熱を出すことすらまれだったし。
「結婚前は、眠ってる時まで陽菜ちゃんのことを気にしてなかったでしょう?」
「……うん」
どんなにヤキモキしても、結婚するまではいつも一緒にいられた訳じゃないから。
「……ん?」
「二十四時間、365日体制で、陽菜ちゃんの身体を気にしてるでしょう?」
「もちろん」
そりゃそうだ。
ハルの心臓は、去年の手術で大分良くなったけど、そうは言っても走れるようになったわけでも、薬が必要ない状態になったわけでもない。ただ、不整脈の数が減って、心臓の動きが少し良くなって、幾らか身体が楽になったくらいだ。
今でもしょっちゅう熱を出すし、胃も壊すし、季節の変わり目も暑いときも寒いときも心臓の調子は悪くなる。熱の出始めは夜中のことも多いし、結婚の後押しをしてくれた夜中の不調だっていつ来るか分からない。
だから、眠っている時だって、ハルの様子を気にかけているのは当たり前だ。
学校でだって、放っておくと誰かに合わせて階段を上り下りしたりするし、誰かの歩調に合わせてしまう。授業中に具合が悪くなっても、ギリギリまで我慢しようとする。
兄貴からの報告を聞いていると、案の定、兄貴がいなかったら、無理をしていただろうシーンが満載だった。
「叶太」
「……あ、うん」
「あなたが今、何を考えていたのか分かる気がするけどね、それ、病気の時くらいやめなさい」
「え!?」
「気が休まってないから、いつまで経っても熱が下がらないのよ?」
「まさか」
「あら、じゃあ、こんなに体力があるあなたが、なんでこうも治らないの?」
「だから、インフルウィルスが……」
「はい却下。ウィルスのせいにしない。疲れがそれだけたまってるから、心も身体も休めなさいって、身体からのサインです」
お袋は左手を腰に当て、右手でオレのおでこのジェルシートをコツンと叩いた。
「結婚前はこんなこと一度もなかったでしょう?」
「……うん」
何年かに一度、風邪引いて自主的にハルの側に寄らない日もあったけど、熱を出すことすらまれだったし。
「結婚前は、眠ってる時まで陽菜ちゃんのことを気にしてなかったでしょう?」
「……うん」
どんなにヤキモキしても、結婚するまではいつも一緒にいられた訳じゃないから。