15年目の小さな試練
 スマホがないというのは、致命的であり、そしてとても効果的だった。

 ハルの事を考えるのは自分がいさえすればできるけど、ハルのために何かするには、会えない今、スマホやパソコンが必須だったから。

 呆然としながら、この夜、熱を出してから初めて、ハルのために何をしようと頭を悩ませることなく眠りについた。

 夜九時前には眠り、起きたら、もう水曜日の昼だった。

 そうして、その日の夕方、しつこかったオレの熱は、ようやく平熱に戻った。

 だけど、

「熱下がったから、スマホ返して?」

 と笑顔で手を出すと、お袋からは

「バカ言うんじゃありません」

 と突っぱねられてしまった。

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