15年目の小さな試練

いつもの体調不良

 水曜日の昼過ぎ、お義母さまから、カナの熱がようやく下がったとメールが届き、ものすごくホッとした。

 火曜日の夜以降、カナからのメールはなかったけど、お義母さまからスマホとパソコンを取り上げたと聞いていたので心配はしていなかった。むしろ、朝も起きて来ずに爆睡していると聞いて、ホッと胸をなで下ろした。

 きっと、わたしの事であれこれ頭を悩ませたり、誰かに連絡を取って頼んだりができなくて、半強制的に頭を空っぽにできたのだと思う。

『夕食後、十五分だけ返却するから、その時は電話に付き合ってやってね~!』

 お義母さまからのメールはそんな言葉で締めくくられていた。
 スマホとパソコンを返してと交渉するカナの姿と、軽やかに断るお義母さまの姿が思い浮かんで、思わず笑ってしまった。



 木曜日、一限の一般教養の授業で一週間ぶりにしーちゃんと斎藤くんに会った。カナがインフルエンザでお休み中だと言ったら、ものすごく驚いていた。

 だよね? こんな時期にインフルエンザなんて、本当に聞かないもの。

 授業の時に約束して、その日のお昼ご飯はしーちゃんと斎藤くんと晃太くんの四人で食べた。
 カナがいなくて、代わりに晃太くんがいるというのがすごく不思議な感覚だった。

「ったく、水くさいな~。叶太くんがいないんだったら声くらいかけてよ~」

 お昼を食べながら、しーちゃんにそんな事を言われて困る。

 それは、しーちゃんに送り迎えを頼むって事だろうか? まさか、ね?

 そんなわたしを見て、斎藤くんが笑った。

「志穂、ハルちゃん困ってるぞ」

 カナと結婚してから、牧村が二人になり、カナが広瀬じゃなくなったって事で、カナと二人、斎藤くんからも名前で呼ばれるようになった。

 それと合わせて、斎藤くんはしーちゃんも名前呼びするようになった。しーちゃんが自分だけ名字は嫌だと斎藤くんに言ったのだって。
< 96 / 341 >

この作品をシェア

pagetop