『またね。』
大丈夫かなあ…
「あ、お父さん。」
さっきメールしたばかりなのにもう来てくれた。
「あれ?卯月くんも外にいたのか。」
「うん。」
「大丈夫か?」
「…ケホッ…はい。」
私は輝にパーカーのフードを被せてファスナーも締める。
「ほら、もう中戻って。」
「…鈴が見えなくなったら戻る…」
「…分かったよ…じゃあお父さん、行こう。」
私は車に乗り込んで車の中から手を振る。
「じゃあね、輝。」
「うん、治ったらまたメールするね。」
ヒラヒラ手を振りながら輝はくしゃみを2発。
車が発進してもまだ輝は手を振る。
お父さんはそんな輝を見て笑っている。
「卯月くん、鈴のこと溺愛してるんだね。」
「うん。」
「熱は高いのか?」
「…うーん、高いのは高いけど大丈夫って…」
…家事をするのは面倒くさそうだけど…
「…卯月くん、早く良くなるといいね。」
「うん、手術の時も絶対来るって言ってた。」
私の、心臓の手術の時も。
一番近くにいるからって。
「…そうだね。いてくれるから…」
お父さんはハンドルを握る手に力を込める。
「…鈴、心臓は大丈夫か?」
「うん、安定してる。」
「なら良かった。」
…ここの所ずっと安定してる。
いつもみたいな発作がある訳でもない。
輝と一緒にいるようになってから発作の回数が減った。
たまに苦しいなって思う時はあるけど、輝の笑顔思い浮かべるだけで楽になる。
「輝のおかげで最近安定してる気がする。」
「…うん、手術終わったらもっと楽になるから…」
…早く、苦しみを取りたい。
生まれてからずっと、この苦しみと付き合ってきたんだ。
ドナーの人…何してるのかな…
「ねえ、お父さん。
ドナーの人と連絡は取れないの?」
「…病院の先生に聞いたらわかると思うよ。」
「ならきいてみよっと!」
お父さんは信号で止まった時に外を向いた。
不思議に思ってお父さんの方を向くとお父さんの肩は震えていて泣いていた…
「お父さん?どうしたの?」
「…いや、なんでもないよ…」
唇も震えていて号泣しているお父さん。
…なんで?
なんでこんなに泣いてるの…?
【佐倉鈴side END】

【卯月輝side】
「ん…」
…夜?
…あ、そっか。
鈴が帰ってからずっと寝てて…
「…頭痛い…」
熱っぽさは無くなったけど頭痛だけまだ残ってる。
…そういえば何も食べてない。
…作るのは面倒くさいし…
コンビニでも行くか。
時間を見てもまだ8時。
僕は財布と携帯をカバンの中に入れてパーカーを羽織る。
メガネをかけて家を出る。
…外寒っ…
1番近いところのコンビニ。
中に入るとひんやりとした空気が迎え入れてくれる。
「いらっしゃっせー」
…ん?
この声、どこかで…
「あれ?
卯月?」
「…」
確か、磯ヶ谷…なんちゃら君。
僕をいじめてたグループのリーダー…
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