『またね。』
輝がいてくれたから。
楽しいことや嬉しいことも沢山できた。
人生で初めての遊園地と水族館も行くことが出来た。
輝と行きたいところ、他にも沢山あるんだよ。
「もうじき、ドナーの人の検査なんだ。
鈴ちゃん、病室に行こう。」
私は看護師の人に連れられて自分の慣れ親しんだ病室に向かう。
「…え?」
なんで…いるの?
なんで検査室に入っていくの?
…ねえ、輝…
「…」
すれ違った時の輝の表情は無表情で。
でも目はどこか優しくて。
…まさか…
「…まさか…ね…」
検査室に入っていったのだって多分事故のことでだろう…
あれからよく輝は頭痛に襲われているから…
「…看護師さんは…私のドナーが誰か知ってるの?」
「…ええ。」
「どんな人?」
「…優しいけど…自分、を持ってない感じがする。」
…輝…
輝じゃないよね?
「…その人を色で例えたら?」
「色?そうねえ…」
…神様、お願い。
輝を取らないで。
私から全てを取らないで。
「水色って感じかしら。
空色。」
「…ああ…」
輝は空の色が良く似合う。
…ねえ、神様…
私、こんなに頑張ってるのに…
どうして私から全てを奪っていくの?
「…鈴ちゃん?」
「…っ…」
輝、なの?
輝っていう証拠はどこにもないけど…
輝が私に心臓をくれるの?
…交わした約束はどこに行くの…?
「…っはあっ…ふぅっ…」
「鈴ちゃん!しっかりして!!」
…やだよ…
輝…
お願いだから…違うって言って…
もっと私のそばにいて…
「…」
…やだよ輝…
ひとりにしないで…
【佐倉鈴side END】

【卯月輝side】
「大変だ!」
病院で先生と面談中。
医者が飛び込んできた。
「鈴ちゃんが発作起こした!」
…鈴…
「なんでも…
輝くんがここに入るのを見てから…」
…鈴、まさか見てたの?
僕がここに入ること…
「…鈴、今どこにいますか…」
…ずっとそばに居るって約束したのに…
「病室だが…」
「…行ってもいいですか…」
もうすぐ、僕の心臓をあげるから…
それまで頑張ってくれ、鈴…
「…鈴…」
病室に入った僕。
鈴は酸素マスクを付けられて苦しそうに僕を見る。
「…ひか…る…」
「鈴…ここにいるよ。」
「…ひとりに…っしな…いで…」
…鈴は涙目で僕を見る。
「…うん、大丈夫。ずっとそばにいるよ。」
…それは僕、じゃなくて僕の心臓だけれど…
「…ほんと…?」
「うん。約束だ。
そばにいるよ。」
敢えて、僕は言わない。
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