キミの溺愛は甘すぎる。



そのため私は呼ぶことにした。


「山城先輩、雪夜はここです」

わかりやすく手を挙げると、山城先輩はすぐ私に気づいてくれた様子で。


女子に騒がれ少し不機嫌そうだったけれど、私の席まで来てくれた。


「耳がいてぇ」
「あっ、それ言ったら失礼ですよ」


仮にも女子が近くにいるというのに文句を言うのはダメだ。

もし聞こえていたら傷ついてしまう。



「あんな騒ぐ意味だろ…」
「聞こえてたらどうするんですか」

ただでさえ、今私の席に来ている山城先輩に視線が集まっているというのに。


けれど山城先輩はまったく気にするそぶりはせず、私にブレザーを渡してきた。


「これ、昼休みわざわざかけてくれただろ?
ありがとうな」

どうやら山城先輩は、ブレザーの持ち主が私だとわかったらしい。

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