キミの溺愛は甘すぎる。



「あ、あったかい…」


缶を両手で包み込むように持つと、熱が伝わってきて。

手はカイロで温まっていたため、今度は頬にくっつけてみる。


その温もりに思わず笑みがこぼれてしまった。


「山城先輩、ありがとうございます」
「……っ、ああ。風邪ひくなよな」

お礼を言って山城先輩を見たけれど、何故か先輩は私のほうを見ずに言葉を返してきた。


「そんなに私って体弱そうに見えますかね…」

みっちゃんにも風邪をひくなと言われたけれど、それほど貧弱な人間ではないはず。

最後に風邪をひいたのは確か受験シーズンの時だ。


「なんか急に熱出しそうだな」
「え、それってどういうことですか」

「お前って熱出したら甘えたくなるタイプ?」
「んー、そうですね…って話逸らさないでくださいよ」


うっかり流されるところだった。

まあ受験シーズンに熱を出した時は、半泣きになりながら優翔に甘えた記憶があるけれど。

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