予言書を手に入れた悪役令嬢は役を降りることにしました。
「ええ、まあね。もうずっ~と長い間」

嬉しげに声が言う。

「あなたは……幽霊、なの?」

ドキドキしながらミリアは問うてみる。
不思議とすでに恐怖心よりも好奇心の方が勝ち始めているようだった。

「ん、ん~、たぶん」
「たぶん?」
「だって自分でもよくわかんないわよ。自分が幽霊かどうかなんて。幽霊とか見たことなかったしさ。でも私が死んだってことはたぶん間違いないし、だとしたら今ここにいる私は幽霊なんだってことになると思う」
「そ、そう」

そういうものなのか。

(……というか、死んでるのね。やっぱり)

ではやはり幽霊なのだろう。
ずいぶんミリアの想像していたイメージとはかけ離れているけれど。

「あ、でも心配しないで?さっきも言ったけど別に危害を加えるつもりとかないから。世の中に恨みがあるわけでもましてあなたに恨みがあるわけでもないし?」 
「そう、な、の?」

では何故成仏していない、という気になるが、全ての幽霊が世を恨んで成仏していないわけでもないのだろう。

「それにね、私たぶんここから出れないと思うから」
「へ?」
「うん、たぶん私って地縛霊って奴なのよ。ここから出れる気がしないもの。だから安心して?あなたに憑いていくことなんてできそうもないから」
「はぁ」

なんだかもうそうとしか答えようがなかった。

「あ、でもできれば一つだけお願いしたいかな」

さらりと告げられた言葉に、ミリアの警戒心が少しだけ復活した。
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