予言書を手に入れた悪役令嬢は役を降りることにしました。
「……そう」
低い、冷たい声が耳朶を打つ。
何かーーー怒りか、あるいは憤りか、とにかく負の感情では違いない、そんなものを感じさせる声だった。
「人がこんなに下手に出てお願いしているのに、そんなこと言っちゃうのね」
「……え、と、その」
ミリアは口ごもってオドオドと視線を迷わせる。
どうしよう。どうしたらいい?
幽霊を怒らせるなんて、どう考えてもしてはいけないことだ。
「いいこと?耳の穴かっぽじってよく聞きなさい。今すぐこのクソ邪魔で暑苦しい布の山をひっぺ返して中の箱を開けなさい。でないと」
けして大きな声ではなかった。
けれど低く静かな声は、確かにある種のおどろおどろしさをミリアに感じさせた。
「……あなたに取り憑いてやるわよ」
ひっ、とミリアは背後の壁にベタリと張り付いた。
「ととと取り憑くって、でも、あなたここから出られないんじゃ」
心臓がバクバクとうるさかった。
鏡を見なくとも、顔面が蒼白になっているのがわかる。
「ええ、そうよ?だけどいつかは外に出ることができるかも知れないわよね?時が経てば私をここに縛り付ける呪縛も解けるかも知れない。少なくとも私は諦めるつもりはないもの。いつか、必ずここから自由になってみせるわ!そうしたらあなたを探す。何が何でもあなたを探し出して嫌がらせしてやるわ!毎晩枕元に立って恨み事を囁いてやろうかしら。それとも歌でも歌ってあげましょうか?出来るだけ気持ち悪い選曲をして気味の悪い歌を耳元で歌ってあげる。ふふ、私、歌には自信があるのよ?情感たっぷりにイヤーな気持ちになれるように歌ってあげる」
低い、冷たい声が耳朶を打つ。
何かーーー怒りか、あるいは憤りか、とにかく負の感情では違いない、そんなものを感じさせる声だった。
「人がこんなに下手に出てお願いしているのに、そんなこと言っちゃうのね」
「……え、と、その」
ミリアは口ごもってオドオドと視線を迷わせる。
どうしよう。どうしたらいい?
幽霊を怒らせるなんて、どう考えてもしてはいけないことだ。
「いいこと?耳の穴かっぽじってよく聞きなさい。今すぐこのクソ邪魔で暑苦しい布の山をひっぺ返して中の箱を開けなさい。でないと」
けして大きな声ではなかった。
けれど低く静かな声は、確かにある種のおどろおどろしさをミリアに感じさせた。
「……あなたに取り憑いてやるわよ」
ひっ、とミリアは背後の壁にベタリと張り付いた。
「ととと取り憑くって、でも、あなたここから出られないんじゃ」
心臓がバクバクとうるさかった。
鏡を見なくとも、顔面が蒼白になっているのがわかる。
「ええ、そうよ?だけどいつかは外に出ることができるかも知れないわよね?時が経てば私をここに縛り付ける呪縛も解けるかも知れない。少なくとも私は諦めるつもりはないもの。いつか、必ずここから自由になってみせるわ!そうしたらあなたを探す。何が何でもあなたを探し出して嫌がらせしてやるわ!毎晩枕元に立って恨み事を囁いてやろうかしら。それとも歌でも歌ってあげましょうか?出来るだけ気持ち悪い選曲をして気味の悪い歌を耳元で歌ってあげる。ふふ、私、歌には自信があるのよ?情感たっぷりにイヤーな気持ちになれるように歌ってあげる」