予言書を手に入れた悪役令嬢は役を降りることにしました。
「……なっ」

偶然か、フワリと吹き込んできた生ぬるい風がミリアの頬を撫でた。
肌に触れたそれがまるで息を吹きかけられたようにも感じられて、ミリアの両腕が鳥肌立つ。

声の告げた嫌がらせ、はまさに嫌がらせの域を出ないものだろう。
幽霊に取り憑かれたにしては少々低レベルでたわいないほどの。

それでも相手が相手である。
幽霊相手ではたとえ嫌がらせ程度の行いといえどその精神的苦痛たるや果たしてどれほどのものか。

そして、ミリアの中で直感とでもいうべきものが告げていた。

ーーーこいつはやる、と。

この声の主はやる。
やると言ったらやる。

きっと何年かかろうが何十年かかろうがミリアがおばあさんになっていたとしても、きっと。


「わかったわ。開けるから、だから」

ーーーお願いだから、取り憑くのはやめて。

ミリアにはもう、それ以外に選択肢は残されていなかった。


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