予言書を手に入れた悪役令嬢は役を降りることにしました。
ーーー夢を見た。


幼かった頃の夢だ。
7才頃までのミリアは何かというとすぐ熱を出す身体の弱い子供だった。

外に出て遊ぶこともあまりなく、一度熱を出せば数日間はベッドからろくに起き上がれもしない。

無事に成人を迎えることができるのか、そんなことさえ心配されるほどの病弱さだった。

その頃のミリアの両親は、大変忙しかった。
ミリアの祖父は平民ではあったがそれなりに裕福な商家の跡取りで、その商才を見込んだ曾祖父の采配で平民でありながら伯爵家の婿になった。
水面下では親族の猛反発やら伯爵家でありながら平民を婿に迎えた曾祖父や祖母への宮廷貴族たちの嘲りやら蔑みやらが雨あられだったようだが、表面上はつつがなく婿取りが行われ、伯爵家は優秀な婿と王都に根を張る商会の二つを同時に手に入れた。

ミリアが生まれる少し前に父は祖父の跡を継ぎ伯爵家の頭首であり、商会の長ともなった。ミリアが一番寝込みがちだった時期は、ちょうど新規事業を起動に乗せるべく働いていた時期で、商会長たる父はもとより、妻である母も売り込みのために貴族の茶会やらサロンやら夜会やらへ連日忙しなく出掛けていた。

そんな忙しない家の中で、ミリアの子育てをし、看病をしてくれたのは乳母のマリアだった。
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