予言書を手に入れた悪役令嬢は役を降りることにしました。
音が聞こえてきたのは廊下へと繋がるドアの側だった。

ミリアは顔だけを向けて、そちらを確かめる。
と、ミリアのよく知るラーナ付きの侍女の一人が、手に水差しを持って入ってきたところだった。

侍女は部屋に入ると窓際のミニテーブルの上に水差しを置いた。テーブルの上には同じ形の水差しが置いてあり、侍女はそれを新しいものに入れ替えにやってきたようだ。

ミリアが目を覚ました時に新鮮な水が飲めるよう、配慮してのことだろう。

侍女はそのまま窓へと近づき、カーテンは閉めたまま、半分ほど窓を開けた。

クルリと振り向き、ベッドのミリアと目を合わせ、

「ミリア様!お気づきになられたんですね!!」

ようやくミリアの様子に気づいて声を上げる。

「ようございました。皆様心配なされていたのですよ?」

普段の冷静沈着な侍女の顔を安堵の色に染めて「ああ、お医者様をお呼びしなければ!」と早口にまくし立てると廊下に飛び出して行った。

侍女の慌てように、ミリアは申し訳なさが込み上げる。

思えばパーティーを抜け出した挙げ句人気のない庭の奥の礼拝堂で、しかも床下の隠し部屋らしき場所で意識を失い倒れていたのだ。

当然騒ぎにもなったであろうし少なからず心配もかけてしまったのだろう。

ミリアは小さくため息をつき、侍女の出て行ったドアを見つめた。
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