予言書を手に入れた悪役令嬢は役を降りることにしました。
女性の姿は、礼拝堂の床下で見たそれとはずいぶん違っていた。

白い夜着は深い蒼のドレスに変わっている。
幽霊に顔色というものがあるものなのかは謎だが、どことなく顔色が良いように見える。

腹の傷はドレスに隠れているだけか、それともなくなっているのか。
はっきりとはわからない。
けれど少なくともドレスに血がにじんでいるとか、はみ出たムニャムニャの分ポッコリしているなんてこともない。

ミリアが眺めていると、女性は何故か眉をひそめてラーナを見下ろしていた。

「ミリア?どうかして?もしかしてまだ気分が悪いのかしら」

ラーナの声に、ミリアは彼女に視線を戻した。

ラーナには幽霊の女性が見えていないようで、誰もいない空間をぼんやり眺めるミリアの顔を訝し気に覗き込んでくる。

「いいえ。大丈夫」
「そう?」
「ええ」

それにしてもラーナはやはりロアンとの逢い引きをミリアが見ていたということには気づいていなかったらしい。

だからこそこれほど普段と変わりないのだろうが、人の婚約者と浮気をしておいてこうも態度に出ないものなのね。となんだか感心すらしてしまいそうだ。

(この分だとアレが初めてでもないのかも)

ミリアが気づかなかっただけで、もしかしたら二人は以前からそういう関係であったのかも知れない。そう思わずにはいられなくて、憂鬱な気分になった。

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