彼の愛した女(ひと)は?

「とっても幸せだ。こうして、一緒に朝を迎えられるなんて」

「はい・・・私も・・・」

「あ、でも早く部屋に戻らないと。お父さんにバレちゃうね」


 そう言って時計を見る静流。


「まだ4時だ。誰も起きていないよね」

「はい、大丈夫だと思います」

「じゃあ、また後でね。今日は一緒に出掛けよう」

「・・・はい・・・」


 それから静流はそっと柊の部屋を出て元の部屋に戻った。


 まだ護は起きておらず、バレずに済んだ。




 その後7時くらいに起きてきた静流は、柊と護ると一緒に朝食を済ませた。

 護は用事がある為出かけて行った。




 静流と柊も出かける事にした。


 まず初めにやって来たのは零のお墓。

 本当の事を報告したいと柊が言い出して、ちゃんと報告に来た。


 バラの花が綺麗に供えてあり、なんだか零も応援してくれているように思えた。




 そして次にやって来たのは静流の母・静香がいる療養施設。

 だいぶん顔色が良くなってきた静香。

 静流が来るととても嬉しそうに微笑んだ。


「母さん、元気そうだね。顔色随分と良くなったんじゃないか? 」

「ええ、最近ご飯がとっても美味しくてぐっすり眠れるの。パジャマと一緒に、この小さな匂い袋が入っていたから。この匂いがとっても落ち着くのよ」


 可愛い小さな匂い袋をてに、静香は嬉しそうに微笑んだ。

「あのさ母さん。今日は、紹介したい人が居て連れて来たんだ」

「え? 」

 廊下にいた柊がそっと会釈をして入ってきた。

「まぁ・・・」

 静香は柊を見て見惚れていた。

 眼鏡をかけていない柊を見つめて、静香はそっと微笑んだ。

「貴女ね。いつも、私にいいお薬を持って来てくれたり。こんなに素敵なパジャマと、いい香りの匂い袋を持って来てくれていたのは」

 驚いた目をして、柊はきょんとなった。

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