鬼課長の魔法の義足。(11/24修正完結済み)
後は……翼君が来てくれるといいのだけど。
残念ながら来ていなかった。
まだ勝ち進めれば決勝もあるし諦めたらダメだ!
きっと来てくれるはず。
私は、課長のように彼を信じた。
するとアナウンサーが流れた。
ますは、源さんも率いる車椅子の予選だった。
奥さんの春子さんのためにも勝ち進みたいところだろう。
競技用の車椅子には、何やらペイントで書いてあった。
よく見ると『HARUKO』と書いてあった。
これは……源さんならではの奥さんに対する
愛情表現なのだろう。これは、なおさら負けていられない。
頑張れ……源さん!!
スタートラインに着くと合図の号砲と共に走り出した。
『レーサー』と言われているだけあって
どの選手も速い。いや予選大会とは、
比べものにならないほどの差だった。
世界中のレーサーが集まっているのだから無理もない。
凄い……凄い迫力だわ!!
そんな速い選手達に囲まれているのにも関わらず
源さんも負けてはいない。
なんせ『天才レーサー』だと言われているのだから。
「源さん。頑張って下さい!!」
私も大きな声で応援した。
違う席には、春子さんが見ている。
たくさんの応援を受けながら 源さんも
見事1位になった。次の予選に勝ち進めた。
やった~!!
私は、下のスタッフ側のところで応援していた。
源さんの1位通過に喜んだ。観客席は、
上の方にあるのだが初めて見ると人達には、
衝撃的だったらしい。
「すげぇ……速いな!?」
「車椅子ってあんなに速く走れるものなんだな?」
そんなことを言う人も居た。
フフッ……驚いているわね。でもまだ甘い。
源さんの走りは、こんなものではない。
きっと決勝も素晴らしい走りを見せてくれるだろう。
それこそあっと言わせるぐらいに。
次に走るのは、視覚障害の800メートル予選。
つまり松岡さんとガイドランナーの加藤さんが走る。
松岡さん達が前に出ると近くで見ていた夏美さんが
そわそわし始めた。いつも落ち着きのある夏美さんだが
やはり松岡さんの時だけ態度が違っていた。
「大丈夫かしら……?
あぁでも……あの筋肉素敵」
心配しながらも筋肉にうっとりしていた。
筋肉フェチでもあるから紛らわしいけど
間違いなさそうだ。
夏美さんは、松岡さんのことなんだと確信する。