鬼課長の魔法の義足。(11/24修正完結済み)

そしてスタートラインに立つと松岡さんは、
加藤さんの持っているバンドらしき物を握った。
準備万端だ。しかし上の観客席から

「視覚障害に走らせるのは、
無理があるのではないか?
転んで怪我でもしたらどうする気だ?」

そんなことを言ってくる人がいた。
上は、ごちゃごちゃうるさいわね。
全く知らない人達には、分からないだろうけど
そんな心配はいらない。
なんせガイドランナーが居るのだから。

声と共に合図の号砲が鳴った。
するとガイドランナーの指示と共に選手が
走り出した。相変わらず息がぴったりだった。
ますば、真っ直ぐと走りながら速さを
調節するガイドランナー。
加藤さんも松岡さんに速さを調節させた。

カーブになると本当に見えているのかと
思うぐらいにスムーズに曲がる。
その際もお互いにペースを崩さない。綺麗なフォームだ。
どの選手もペースを崩さずに走り続けている。
しかし、こちらも予選大会と比べものにならないほど
どの選手もガイドランナーと息がぴったりで速い。
世界から強者が集まっているのだから
当然と言えば当然なんだけど。

「松岡さん……」

夏美さんも不安そうに見ていていた。
1周目第2コーナーを抜けるとオープンレーンになる。
その際に合図の鐘が鳴った。
すると選手とガイドランナーは、
スピードを上げて行く。ここからが執念場だ。

ポジション争いや駆け引きが激しくなる。
中には、転倒や接触する選手も現れるため
800メートルは『陸上の格闘技』と言う異名も持つ。

松岡さんと加藤さんは、そんなのお構いなしに
どんどんとスピードを上げて行った。
駆け引きなら『盲目の天才ランナー』と
『盲目のペテン師』の両方の異名を持つ
松岡さんの得意分野だ!

圧倒的の速さと信頼関係で先頭に立った。
夏美さんの告白のためにも
こんなところで負けてる訳にはいかないのだろう。
決勝まで行かなくては……。

「頑張ってくださーい!。松岡さん!!」

私は、精一杯の声援を送った。
すると夏美さんも

「松岡さーん。頑張れー!!」

やや恥ずかしそうにするも応援を始めた。
周りの観客もたくさんのエールを送る。
中には、距離を教えてくれようとする人も居た。

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