鬼課長の魔法の義足。(11/24修正完結済み)
凄い……。あんなに競技に対して心配していた人達は、
いつの間にか応援に変わっていた。
そこには、一体感が生まれていた。そしてゴールの瞬間。
1位を独走したのは、松岡さんペアだった。
走りきると周りは、握手が起きた。
「キャアッーやったー!!」
大喜びの夏美さん。しかし、私と目が合うと
恥ずかしそうに止めてしまった。
どうやらツンデレなところがあるようだ。
フフッ……松岡さんに、この事を教えたら
喜びそうなぁと思った。何だか可愛らしい……。
競技を続けている中、いよいよ
課長やロンさん達の出番になった。
運動機能障害のクラスの1つ永井さんも含め
切断の方で走る。100メートル予選。
先に走ることになったのは、ロンさんだった。
ユニホームにサングラス。
そして右足には、競技用の義足をつけていた。
準備が整ったロンさんがスタートラインに立つと
たくさんの女性達の黄色い声援が飛んだ。
投げキスをするとさらに声援が上がった。
やっぱり凄い人気だわ……。
こんな人が課長と最大のライバルで
親友だと言うのだから凄い。
私も抱き締められたことがあるから驚きよね。
もしそんなことを知られたら
女性ファンに殺されかねない。黙っておこう。
そう思っている間に合図の号砲が鳴った。
すると真っ先に先頭に立ったのは、ロンさんだった。
動画で観た時よりも一段と速くなっていた。
まさに世界絶対王者と言われるに相応しい走り方だ。
軽やかで力強い。
「凄い……」
もう別格の速さに驚いてしまった。
こんな人と課長が対戦するのね。
ドクンッと心臓が高鳴る。不安がまた襲ってきた。
信じているはずなのに勝てるか不安になる。
しかしロンさんは、そのまま1位を守り続けた。
タイムも素晴らしいものだった。
驚きながら見ていると黄色い声援が飛ぶ中
ロンさんは私に気づいた。
するとサングラスを外し私にウィンクしてきた。
えっ……!?
そうしたら私の上の女性客が自分にされたと
思って騒ぎ出した。えぇっ!?あ、あの……。
どう反応したらいいか戸惑ってしまう。
そんなの投げキスされても困る……。
チラッと戸惑いながら課長の居る方を見ると
明らかに不機嫌になっていた。
近づいて行くロンさんに何やら怒っていた。
それを聞いて苦笑いしながら謝っていた。
相変わらず……仲がいいな。
私は、それを見てクスクスと笑ってしまう。
ライバルなのにお互いに気を許しているのが
見ていて微笑ましい。