何の取り柄もない田舎の村娘に、その国の神と呼ばれる男は1秒で恋に落ちる【前編】
「やったねー!!三人共合格!」

華子が天音と星羅に駆け寄って、喜びの声を上げた。
天音は何がなんだかわからないまま、気がつくと出口に辿り着いていて、試験は無事に突破したようだった。

「うん…。」

しかし、あの道で見たものが一体何だったのか、気になって仕方がない天音は、腑に落ちない表情のままだった。

「天音?どうしたの?嬉しくないの?」
「いや、嬉しいけど…。」

あそこで見たものは、何だったんだろう?
ただの幻…?それとも…。
天音はめずらしく黙りこくって、考え込んでしまっていた。

「よっぽど怖い怪物でも見た?」

そんな天音に対して、星羅はいつものように冷静に、だが少し茶化すような言葉を天音にかけた。
おそらく、それが星羅なりの心配の仕方なのだろう。

「え…。んーん。そんなのいなかったよ…。」

…怖くなんてない。
ただ、何かが心にひっかかった。
それが一体何なのか。
この時の天音には、分からなかった。
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