何の取り柄もない田舎の村娘に、その国の神と呼ばれる男は1秒で恋に落ちる【前編】
「ん…。」

その時、ベッドに横たわる京司が、小さな声を発した。

「天師教!」
「天師教様!」

皇后と士導長は、京司のその小さな声に反応し、とっさに呼びかけた。
それと同時に、京司の重たい瞼が、ゆっくりと上がっていく。

「俺…。」

目の前にいる、二人の人物の顔を見た京司は、自分の置かれている状況を何とか理解しようとしていた。

「よかった。お気づきになられたんですね。」

士導長が嬉しそうに、京司を見つめていた。

「本当によかった。」

皇后も目を潤ませ彼を見つめ、それ以上言葉が続かない。

そうか…。俺は眠っていたのか…。…そう。あれは夢…。


「名前聞くの忘れたな…。」

京司はボーっとした頭でポツリとつぶやいた。


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