何の取り柄もない田舎の村娘に、その国の神と呼ばれる男は1秒で恋に落ちる【前編】

「なんか騒がしくない?」

真っ先に外の騒がしさに気がついた華子が、二人に向かってその疑問を投げかけた。
夕食後、いつものように三人は部屋にいたが、華子の言葉で、天音も外の異変に気がつき始めた。
彼女達の部屋の扉の外からは、人々が行きかう足音がせわしくなく聞こえてきた。

「どうしたんだろうね?」

天音がふと気になり出し、首を傾げて立ち上がった。そして、おもむろに扉の方へと向かい、扉のドアノブを回してみた。

ガチャ

「外に出るな!」
「へ?」

扉を開けるなり、部屋の前を通りかかった兵士に怒鳴られ、天音は部屋の中へと押し戻された。

「な、何かあったんですか?」

その緊迫した様子に、驚いた天音の代わりに、華子が外にいる兵士へと尋ねた。

「反乱者がこの城に侵入した。」
「え?反乱者?」

低い落ちついた声で、兵士が答えた。
その言葉に過剰に反応したのは、天音だった。

「反乱者はすぐ捕らえる。それまで部屋の外には出るな」

そう言って、兵士は走って去って行った。

「反乱者って…。」

天音は、なぜか嫌な予感を感じていた。
聞かなくてもわかる…。そう、それは彼に違いない。
天音の本能がそう叫んでいた。

『あいつを不幸にしたくないなら、もう会うな。』

「せい…?」

天音は無意識のうちに、もう一度ドアノブに手をかけた。

パシッ

「え…。」

そんな、天音の腕を強く掴んだのは、星羅だった。

「行ってどうするの?」
「でも!」
「あの反乱者とあなたが知り合いだってこの城の者にバレたら、どうなると思う?」
「…。」

星羅には、天音の考えている事なんて、全てお見通しだ。
天音が彼に会いに行った所で、それは自滅行為。
妃になるどころか、同じ反乱者としてみなされる場合だってある。

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