何の取り柄もない田舎の村娘に、その国の神と呼ばれる男は1秒で恋に落ちる【前編】
「!?」
天音は、その悲痛な叫びに、大きく目を見開いた。
彼のその声は、天音の所まで確かに届いていた。
彼はやっぱり、青に会いに来ているんだ…。
「で、さっきから何の話ししてんの?」
全く状況のわかってない空気の読めない華子が、キョトンとした顔で、天音と星羅を交互に見ていた。
「ごめん!星羅!」
ガチャッ
天音は、ドアノブにもう一度手をかけ、扉を開けると、部屋の外へと勢いよく駆け出した。
「あーあー。行っちゃったー。」
華子がクスクス笑いながら、天音の背中を見送った。
「なんかわかんないけど面白そう!見物行かない?」
華子が星羅に向かって、そう言って笑った。
彼女は、何が起きたか全くわかってないようだが、これから何かが起こるであろう事は予感していた。
「…。」
星羅は、閉まったばかりの扉を、ただ黙ってじっと見つめていた。