何の取り柄もない田舎の村娘に、その国の神と呼ばれる男は1秒で恋に落ちる【前編】
「お前に…。」

月斗が顔を伏せ、その表情は天音からは、見えなくなった。

「あなたに…何がわかるの…。」
「…え…?」

月斗の声を消し去るように被さった、背筋の凍るような冷たい声に、天音が後ろを振り返った。

「かずさ…。」

天音は、いつのまにか背後にいたかずさの気配に全く気がつかなかった。
そして、なぜか彼女の冷たい視線から逃れる事ができなくなり、後ろを振り返ったまま、動けなくなった。

「あなたは何もわかってない。」
「え…?」

彼女の視線は、いつもより厳しく、その声もいつもより低い。
そんな彼女は、簡単に天音を追い詰める。



「月斗が青の姉を殺したのよ。」




————まるで、体が凍ったように動けなくなった。




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