何の取り柄もない田舎の村娘に、その国の神と呼ばれる男は1秒で恋に落ちる【前編】
「天音はこれからも、なんも変わらんよな?」
「…私にそれを聞くの…?」

ザ―

いつもより少し冷たい風が、かずさの髪を揺らしてた。


「私に頼ったら終わりよ…。」

かずさはりんに背を向け、階段を一歩上がった。

「え?」
「この国と同じ…。」

かずさのその目に映るのは、目の前にあるこの城。

「かずさ、帰るんかいな?」

りんは、そんなかずさを見上げた。

「ええ。」
「城に…か?」
「そこが私の帰る場所だから…。」

そう言ってかずさは、また歩を進めた。




「ほんまに聞きたい事は、聞けんもんなんやな…。」

かずさがその場を去ってしばらくして、りんもやっとその場から立ち上がって、そこにある大きな夕日を見つめていた。

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