何の取り柄もない田舎の村娘に、その国の神と呼ばれる男は1秒で恋に落ちる【前編】
ヒュー

「何や寒いなー。」

翌日も城の前に座り込んでいるりんは、この国には珍しい程の冷たい風に吹かれていた。

「気温が下がってきている。」
「そうか…。」

いつの間にかりんの隣にいた彼に、りんは違和感なく相槌を打つ。

「この国は、ここ400年位は気温が一定に保たれている。」
「へー。」
「ほぼ、18℃~25℃の間だそうだ。なのに、ここ最近は18℃を下回る日もある。」
「さすが、物知りやなー。」

りんは、興味があるのかないのか、どこか気の抜けた答えで返すだけ。

「そんな事知ってても、何の役に立つんだかな…。」
「また、自虐ネタかいな!」

りんは、ほんの少し楽しそうに、隣にいる京司に向かってツッコんでみせた。

「500年以上昔は、たくさんの国があった。その国によって、気候などは違った。」

そんなりんに構う事なく、京司はまだその話を続けた。

「ほー。」

りんは、京司がなぜそんな話をしているのか少し不思議に思ったが、相変わらず相槌を打ち続けた。

「季節がある国もあった。」
「キセツ?」

その言葉は、りんが初めて聞く言葉だったため、思わず反復してみたが、いまいちピンと来ない。

「ああ、暑い時、寒い時…。」
「ふーん、なんかようわからんわー。」

京司が何を言いたいのか、りんにはさっぱりわからず、ついにしびれをきらした。

「この国はどうして、一定になったんだろう…。」

すると突然、京司はその疑問を口にした。
彼が言いたかったのはこの事なのか?とりんは隣で首を傾げてみせた。

「何にも面白くなんかない。」

京司はそう言って、どんよりと曇った空を見上げた。

「お前がおもろいやないか。」

そう言ってりんは、口もとに笑みを浮かべた。

「そんな事考える奴、なかなかおらんでー。」
「…そうか?」

京司は、未だ空を見上げたまま動かなかった。
そんな京司を見たりんは、こりゃ、後で首が痛くなるんじゃないか、とそんなどうでもいい心配をしていた。
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