何の取り柄もない田舎の村娘に、その国の神と呼ばれる男は1秒で恋に落ちる【前編】
「天音ー!!おったー!」

その時、その騒ぎを聞きつけてやって来たりんが、天音の姿を見つけ叫んだ。
しかし、辺りは人混みで、天音にりんの声は届いていないようだ。

「あの!!ありがとう!!」

天音は周りの視線を気にする事なく、決して振り向く事のない彼の背中に向かって叫んだ。

「私は天音!あなたは…。」
「最後までうるせー女だなー。」

彼が振り返らずにそう叫んだ。
その瞬間、天音の背後から、こちらに駆けてくるたくさんの足音が聞こえた。
ガシ!!

「反乱者、ツキト。捕獲!」

一瞬の間に天音を追い越していった城の兵士は、なんとも簡単に月斗を捕らえ、その手に手錠をはめた。

「え…?」

しかし、天音は目の前で起こっている出来事を理解できず、呆然とその場に立ち尽くした。
当の本人も、暴れる事もなく、何か言葉を発する事もなく、ただ黙って大人しく捕らえられているだけだった。

「え、ちょ、待って…。反乱?」
「やったー!」
「さすが、国の兵士!」
「これで安心ね。」

天音はただ混乱するばかりで、どうしていいのかもわからない。
しかし、そんな天音とは対照的に、町の人々は喜びの声を上げた。
この国では、町の警備や警察のような役割も、城の兵士がこなしていた。
つまり、そんな兵士に捕らえられた彼は…。
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