何の取り柄もない田舎の村娘に、その国の神と呼ばれる男は1秒で恋に落ちる【前編】
「天音!!」

りんが、唖然としている天音にすぐ様駆け寄り、声をかける。

「え…りん?」
「もう帰らないけない時間やろ!!」

天音は、もう何が何だかわからず、突然目の前に現れた、りんの切羽詰まった表情を見つめた。

「え、あ時間…。」

そう、もう夕日の姿は半分しか見えていない。
あともうすぐで夕日は沈んでしまう。

「はよう!城へ帰らんといかんのやろう!」
「でも…。」

りんは、必死に天音に訴えかけるが、天音は月斗の事が気になってしかたない。
月斗は、やはり抵抗するそぶりは一切見せず、どうやら兵士に連行されていくようだ。

「天音、あいつと知り合いかいな?それより、妃になりたいんやろ!こんな簡単に城を追い出されてええんか?」
「りん…うん。そうだね、追放されちゃ困る!帰らなきゃ!」

天音は、後ろ髪引かれながらも、りんの必死の訴えで、やっと正気を取り戻した。

「りん、ありがとう!またね!」
「急ぐんやで!」

天音は、城へ向かって走り出した。

(どういう事…?あの人が反乱の人?)

しかし、頭の中はさっきの出来事で占められていた。
町の人達はあの人の事を冷ややかな目で見ていたけど、彼は人相は悪いけど、そんな悪い人には見えなかった。
様々な考えが天音の頭を駆け巡る。

「はぁ、はぁ。」

しかし、今は時間がない。夕食までに帰らなければ、ここを追い出される。
妃になるためにまだ何もしてないのに、村に帰るなんて出来るわけがない!!
そう自分を奮い立たせて、一気に城へと続く階段を駆け上がった。

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