私の中におっさん(魔王)がいる。~花野井の章~
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「彼女がどのように死んでいったのか、その死に様を俺は知らない。俺が最後に見た彼女は、何かに押しつぶされるように土に伏せ、背中に小さな穴が開いた、その姿だけだ」
追想するように語った亮さんの瞳には、憎しみの色が滲んでいた。
「そんなに、母を好きでいて下さったんですね」
感謝するように、嬉しそうな瞳で皇王子は亮さんを見据えた。
「僕は、良く覚えてないんですよ。僕が五歳の時に亡くなったので、母の顔も、まともに覚えていません。だけど、花野井の伯父さんや、父上から、母上の事は聞いていました」
皇王子は少し嬉しそうに言って、次の瞬間顔を曇らせた。
「本当に、聞き及んでいただけなんですけど……」
少しだけ哀しげに呟かれた声音は、弱々しかった。
やっぱり、お母さんに会えなくて寂しいんだろうなぁ。
会えないと分かっていても、会いたいんだろうな――と、感傷に浸りそうになっていると、鉄次さんが、短く語りだした。
「私は、亮ほど彼女に思い入れはないわ」