私の中におっさん(魔王)がいる。~花野井の章~

(鉄次の懐古)

 友達だったのは事実だけど、お互い戦場に身を置く身だもの、死はどこかで覚悟していたわ。
 亮が柚を好きなのは知ってた。

 なんだかんだ言っても姉弟だもの。
 自然と分かるものじゃない?

 友達だったから、酒の席での恋バナもしたから、彼女の好きな人が兄だってのは知ってた。
 でも、妊娠したときは、誰の子なのか教えてくれなかった。

 だから私は、今の今まで皇王子が、あの時の子だなんて知らなかったわ。
 赤ん坊の頃に会ったきりで、中々会わせてくれなかったしね。

 彼女が死んでからは、里親が見つかったって聞いていたから、安心はしてたんだけど、まさか、城に引き取られてたなんてね。びっくりよ。

 確かに、彼女の事は残念に思うし、哀しいわよ。
 でも、それ以上に生きてる者の方が大事でしょ?
 私は、亮の事が心配でならなかったわよ。

 いつまでもいつまでも、柚にこだわって、他の異性に見向きもしない。
 いつまでも死者に思い入れる。
 そんなの不毛よ。

 だから色々世話を焼くのに、この子ったら見向きもしないどころか、鬱陶しがるんだもの。
 まったく、姉の心、弟知らずだわ。
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