私の中におっさん(魔王)がいる。~花野井の章~

 * * *

「そんな事があったんですね」

 安慈王子は、普段からは想像がつかないほど、小さな声で呟いた。葎王子は、こくんと小さく頷いた。

「思えば、僕は、子供の時からこんなだな。どっちつかずの蝙蝠だ」

 自嘲する葎王子に、安慈王子と皇王子は一斉に声を上げた。

「そんなことはありません!」

 重なった声に驚いて、三人は顔を見合わせた。
 そして、誰からともなく、ふっと小さく笑いあった。

「兄様は、優しいのですよ。ただそれだけです」
「それが良いのか悪いのかは、別にしてな」

 皇王子が葎王子に笑みかけ、安慈王子が、からかうように声を上げた。
 笑い合う三人を見て、なんだか三人の間のわだかまりが解けたような、そんな気がした。

「柚は――」

 低い調子の声音が聞こえ、みんなは声の主であるアニキに注目した。
 アニキは、懐かしそうに遠くを見て、嬉しそうに笑んだ。

「柚は、どこにいても柚だったんだな」
< 117 / 151 >

この作品をシェア

pagetop