私の中におっさん(魔王)がいる。~花野井の章~
* * *
「そんな事があったんですね」
安慈王子は、普段からは想像がつかないほど、小さな声で呟いた。葎王子は、こくんと小さく頷いた。
「思えば、僕は、子供の時からこんなだな。どっちつかずの蝙蝠だ」
自嘲する葎王子に、安慈王子と皇王子は一斉に声を上げた。
「そんなことはありません!」
重なった声に驚いて、三人は顔を見合わせた。
そして、誰からともなく、ふっと小さく笑いあった。
「兄様は、優しいのですよ。ただそれだけです」
「それが良いのか悪いのかは、別にしてな」
皇王子が葎王子に笑みかけ、安慈王子が、からかうように声を上げた。
笑い合う三人を見て、なんだか三人の間のわだかまりが解けたような、そんな気がした。
「柚は――」
低い調子の声音が聞こえ、みんなは声の主であるアニキに注目した。
アニキは、懐かしそうに遠くを見て、嬉しそうに笑んだ。
「柚は、どこにいても柚だったんだな」