私の中におっさん(魔王)がいる。~花野井の章~

 ただ、人を殺せない柚は懲罰の対象となる。
 だから俺も、人を殺さなかった。
 俺が殺さなければ、柚に懲罰の矛先が行く事はねえ。
 なぜなら、柚の能力は特殊だったからだ。治癒能力と、水を操る能力を所有していた。二つ以上の能力を持つ者は、世界的に見て稀だった。
 そんな柚に体罰を与えて万が一殺してしまう事がないように、俺も懲罰を受ける事になれば、奴らは必ず、俺だけを攻撃する。
 俺は頑丈だったからな。
 叩くかいもあっただろう。
 
 それが証拠に、通常の懲罰時間より、俺は一時間以上長く受けることが常だった。だが、幸いこの体だったおかげで、柚が傷つく事はなかった。
 柚は俺が懲罰を受ける事を知らなかった。
 奴らも、知らせるつもりはなかったんだろう。そんな事をすれば、柚の事だ。連中に食って掛かって行くか、自分を責めて死にかねない。

 そんなある日のことだ。盗賊団が皇龍団を襲撃する事件が起こった。
 皇龍団に押し入った奴らは、宝を奪い、親父を殺して柚を連れ去った。
 俺はその時、カシラに言われて、数人の仲間と仕事に出かけていた。
 戻ってみると、かなりの惨事で、俺はカシラに柚を連れ去られたと聞かされた。どうやら、盗賊団は柚が特殊能力者だと知ったらしい。
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