私の中におっさん(魔王)がいる。~花野井の章~
俺は、我を忘れた。
親父を殺された事など、どうでも良かった。あんな奴に、愛情の欠片もない。ただ、柚が、そんな目に合うのだけは嫌だった。
冷静に考えれば、柚が殺される事はなかっただろうが、俺は不安と恐怖でいっぱいだった。
柚がいなくなったら、俺は世界で一人になる。
そんな恐怖が、俺にはあった。十二歳かそこらの、ガキだったからな。
俺は、殺した。
盗賊団の連中を片っ端から。
初めて能力を抑える事をしなかった。
十二のガキの、細っこい腕を振り回しただけで人が死ぬというのは、なんとも喜劇的に思えた。ギャグだろ? って話だ。
全てが作り物ののような、そんな気さえした。
俺は、血を浴びながら、ただ柚の事だけを考えた。
ただ、柚に会いたかった。この手に、取り戻したかった。
だが、盗賊団を殺した後、柚は泣いた。
悪い人だったとしても、殺されていい理由になるのか? と。何より、俺が、柚のために人を殺した事が、彼女には許せなかったんだ。
柚は、俺にそうさせた自分を許せなかったんだ。
夜に、何日も一人で泣いては、自分が捕まったのがいけないんだと自分を責めていた。
俺がそれは違うと言っても、柚は納得しないだろう。なんとか、彼女の気が晴れないか考えていた日。
盗賊団に盗まれ、取り返した宝の中に、ドラゴンの卵が眠っていた。それが孵化しそうだからと、俺が世話を押し付けられたのを思い出した。
柚が喜ぶだろうと、ドラゴンが孵るのを一緒に見届けた。ドラゴンが生まれ、案の定、柚は喜んだ。
満面の笑みを見て、俺は心底嬉しかった。
柚は、産まれたてのドラゴンを白矢と名づけて嬉しそうになでていた。俺は柚の笑みを見ながら、白矢が生まれた収容小屋で誓った。