私の中におっさん(魔王)がいる。~花野井の章~

「奥ってのは、床につく部屋の事なの。ほら、この部屋の奥って、静かでしょ?」
「静かですけど、お客さん入ってないからじゃないんですか?」

「違うわよ。この奥の廊下を曲がった先にね、泊まれる部屋があるのよ。カップルで入っても良いし、お客さんについた遊女が、この人となら良いかなぁとか、今月お金欲しいから良いかなぁってな理由で許可すると、その人と泊まるのよね」

「えっと……ここって、その、飲食するだけの花街じゃないんですか?」
「基本はそうね。オプションがつくこともあるって事よ」

 オ、オプション。カラダを売る事がオプションなんだ……。
 ショックを受けている私に、鉄次さんは更なる衝撃的なことを告げた。

「だけど、ここの花街で働く者はまだ良いわよ。中央の花街は、親に売られたり、身寄りがない者が集まって出来た街で、しょうがなくカラダを売ってる者ばかりだし、東の花街は、人攫いにあって強制的に働かされてる人達ばかりだからね。だからか、子供が多いのよ。男女問わずね。同性愛者の店では自分から望んでその職に就く者もいるけど、殆どがそこで売りやって大人になった者が就くのよね。北の花街が一番健全よ。ここで働く者は男女問わず自分の意思で働いて、自分の意思で客をとるかどうかを決めれるんだからね」

 私は目の前が真っ白になった。
 歴史とかで、そういう話は聞いたことがあったけど、東の花街の話は、私にとって衝撃以外の何者でもなかった。
 だって、子供がそんな目に遭うだなんて……。
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