追放された悪役令嬢ですが、モフモフ付き!?スローライフはじめました


◇sideカーゴ◇


 気付いた時、俺はアイリーンから「プリンス」と呼ばれていた。
 どうしてアイリーンが、俺が皇子だと知っている……? 俺の身分は安易に明かしていいものではなかったから、これには正直驚いた。
 とはいえ、アイリーンは俺の「プリンセス」になるのだから、さほど問題とは捉えなかった。
 それよりも、目下俺の最大の思案事項は、アイリーンが俺を「ネコ」扱いする事だった。しかもアイリーンは、俺の事を「ネコちゃん」と呼んではばからない。
 アイリーン、君はなにか間違えている! 俺はネコではなく虎だ! ここは断固、アイリーンに徹底抗議を――!
「ふふふ、プリンス。なんて可愛いネコちゃんなんだろう」
 キリリと見上げた瞬間、アイリーンにガラ空きになった喉元をモフモフと撫でられて、その気持ちよさに蕩けた。
「グルグル」
 自然と喉が鳴り、尾っぽもバッフバッフとはためく。
 ……うむ、アイリーンが俺をネコと呼ぶのなら、細かい事は言いっこなしだ。
「ふふふ、気持ちいい?」
「ガウガウッ、……グルグル」
 なにより大きく括れば虎とて同じネコ科なのだからして、気にするほどの事ではない! 俺はこの日から、甘んじて「ネコちゃん」になる事を決めた。
「あ、そうだ。さっきのシフォンケーキは約束通りプリンスのだよ。はい、遠慮なく召し上がれ?」

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