追放された悪役令嬢ですが、モフモフ付き!?スローライフはじめました

「ガウガウ」
 俺はアイリーンの手ずからシフォンケーキを頬張り、ついでにその手をペロペロした。
「きゃっ、やだプリンス。くすぐったいよっ」
 俺はアイリーンが抵抗しないのをいい事に、手首といわず、腕といわず、柔らかな首元から頬までをペロペロと舐めて堪能した。
 シフォンケーキは甘い。けれどアイリーンの肌は、俺の舌にシフォンケーキより、もっと甘い。
「こーら、プリンス! めっ!」
 アイリーンの「めっ!」を耳にした瞬間、俺はピキンッと固まる。「めっ!」の可愛さの破壊力に、くらくらした。
 すると、動きを止めた俺の胸にアイリーンがバフンッと飛び込んで、形勢逆転とばかりに再びモフモフとしはじめた。
 俺は大人しくアイリーンのするに身を任せながら、夢のような幸福を噛みしめていた。
「もう、プリンスったら食いしん坊なんだから」
 ……食いしん坊? いいや、俺が本当に食べたいのはケーキじゃない。
 俺が食べたいのは――。
「……あ。そろそろ雨、上がりそうね」
 なんだと!?
 アイリーンの呟きを聞き、弾かれたように窓に目線を向ければ、ザーザー降りの雨はすっかりと雨足を弱くして、いつ止んでもおかしくない状態になっていた。
 どうやら俺は、心地いいアイリーンとの時間に浸り切り、すっかり状況把握を疎かにしてしまったようだった。

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