追放された悪役令嬢ですが、モフモフ付き!?スローライフはじめました
段々と弱まる雨を背中に受けながら、俺はひたすら走った。なんとか雨が上がる直前に、ルークと同居するロッジの玄関に体を滑り込ませた。
――ポポンッ!
玄関扉が閉まった瞬間に、俺の獣化が解けた。
なんとかギリギリ、間に合ったようだ。
――バサッ!
俺が安堵に胸を撫でおろしていれば、頭上にバスローブが投げつけられた。見上げれば、玄関の先でルークが仁王立ちして俺を睥睨していた。
「すまないな」
ルークの目は明らかに据わっていたが、ルークが俺を心配し、ずっと帰宅を待ってくれていた事は間違いなかった。頭上に掛けられたバスローブがそれを証明していた。パリッと乾いたバスローブは、帰宅する俺のためにルークがわざわざ用意しておいてくれたのだ。
「すまないな、じゃねーだろうが! お前、どこをほっつき歩いてた!? 後一歩帰宅が遅ければ、お前は素っ裸で夜道を駆ける変質者だ!」
普通、一番に気にするのは、それではないと思うのだが……。
「す、すまん」
とりあえず反論の余地はないので、素直に頷く。しかしルークの懸案事項が獣姿を目撃される事ではなく、全裸で夜道をゆく変態行動であった事に、内心で首を捻る。
「ま、お互いいい大人だ。ほんとは余計な事は、言いたかねーんだ。とは言え、同居人が露出狂の変質者だなんて広まっちまったら、女にモテなくなっちまうからな!」
告げられたなんともルークらしい見解に苦笑が漏れた。