追放された悪役令嬢ですが、モフモフ付き!?スローライフはじめました

「……それは俺にも分からん」
 カーゴは少し考えるようにして、大きめにカットしたパンケーキを頬張った。
「まぁ、マイベリー村は今が一番の観光シーズンだから、学園を休んでやって来たとしてもおかしくないわね」
「……果たしてそうだろうか」
 私の見解に、カーゴは納得いかない様子で答え、皿に残ったストロベリーパイの最後のひと切れを味わうように噛みしめた。
「もし今後同様の事があったら、すぐに俺に報せてくれ。君にこれを渡しておく」
 カーゴは懐から、なにかを取り出して、私に向かって差し出した。
「これはなに?」
 それは、小型の機械のようだった。
「通信機だ。そこのブザーを押すと、俺の通信機にモールスで信号が届く。この村内ならば、問題なく通信可能だ。報せを受けたらすぐに駆け付ける。他にも、危ない事や困った事、なにかあればいつでも鳴らしてくれ」
「……」
 私は言葉を失っていた。モールス通信は、実用化の研究が始まったばかりの最新鋭の技術だった。
「カーゴ、すごい物を持っているのね?」
 いまだ研究段階のそれが民間に普及するには、後数年の年月を要すると見られていた。そんな最新鋭の機械を何故、カーゴは当たり前に持っているのか。

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