追放された悪役令嬢ですが、モフモフ付き!?スローライフはじめました

「……まぁ、父の伝手でな」
 カーゴは苦笑を浮かべ、言葉を濁した。
「そう、お父様の……」
 これまで直接聞いた事はなかったが、カーゴの実家はかなりのお金持ちだろうと想像がついていた。だけどもしかすると、カーゴのお父様は単にお金持ちというだけでなく、相当に地位の高い人物なのかもしれない。
「とにかく、これは君が持っていてくれ。女性一人で店を切り盛りしているんだ、いつなにがあるとも限らん。なにもなければそれでいいんだ。これは一応の保険と思ってくれればいい」
 私はカーゴから通信機を受け取った。
「ありがとう」
 受け取った通信機は、手のひらにのるサイズで、エプロンのポケットにピッタリと収まった。
「カーゴ、もうこの後お客様は来ないと思うわ。よかったら残りのパイとシフォンケーキもいかが?」
「もらおう」
「待ってて、すぐに用意するわね」
 マイベリー村の夜は早い。客の引きも王都に比べて格段に早く、閉店間際の来客はほとんどない。
 結局この日も、カーゴの後にお客様は訪れなかった。
「カーゴ、お待たせ」
「ああ、帰るか」
 私はカーゴと閉店までの時間を過ごし、いつも通り一緒にお店を後にした。
「すまないが明日は少し都合が悪い。店にはおそらく行かれない」
 家の前まで差し掛かり、別れ際にカーゴから告げられた。
「うん、分かった。そういえば、明日はお天気も崩れるみたいね。体調の方も、気を付けてね」
「ああ、それじゃあまた明日……いや、明後日に」
 カーゴは「明日」と言い間違えたのを慌てて「明後日」と訂正すると、一本通りを行った先のルークと住むロッジへと足早に駆けて行った。


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