追放された悪役令嬢ですが、モフモフ付き!?スローライフはじめました
「きゃーっ、プリンスくすぐったいよ」
それを合図にプリンスの遠慮は消えて、私たちはこれまで通り、体当たりでたわむれた。
「ガウガウ」
そうして心ゆくまでモフリ倒したところで、私はふと、窓の外が明るくなっているのに気付いた。
「……あ、少し雨足が弱くなってきたみたい」
見れば、外はずいぶんと雨足が弱くなっていた。
「これなら、これからお客様があるかもしれないわね」
「ガウッ!!」
私が呟けば、縺れ合うようにして伏せていたプリンスが、突然ガバッと立ち上がった。
「え?」
「ガウ、ガウガウッ」
プリンスはジッと私の目を見つめ、必死になにかを訴える。
「なに、プリンス? いやだ、もしかしてまた行っちゃうの!?」
プリンスが行こうとしている事に気付き、私はふるふると首を振る。私を見つめるプリンスの瞳には苦渋が滲んでいた。
「ガウーンッ」
プリンスは切なく一声嘶くと、私の視線を振り切るように背中を向けて、一直線に扉に向かう。取手に前足を掛けて器用に引くと、出来た隙間に鼻先を滑らせて、そのまま外に駆けて行った。
その間、僅か二~三秒の出来事だ。
……やっぱり、プリンスってネコちゃんにしては器用すぎやしない? これは、前回の別れ際にも思った事だ。
プリンスが行ってしまった寂しさもさることながら、再び目撃した驚きの光景を前に、私はひとり唸っていた。