追放された悪役令嬢ですが、モフモフ付き!?スローライフはじめました




 苺をジェームズさんの農園の物に切り替えて一週間が経った。苺の粒こそ小ぶりになったけれど、味や見栄えにさしたる影響はなく、お客様の評価も上々。当初の心配を余所に、営業はとても順調だった。
 店は今日も、朝から多くのお客様が訪れて繁忙した。チラリと壁掛け時計に目線を向ければ、閉店まで後一時間半。
 マイベリー村では、夜のお客様はほどんどいない。しかも夜半からと思われた雨が少し早めにきそうで、窓の外は既に曇天に変わっていた。
 セント・ヴィンセント王国の西端、カダール皇国にも程近いマイベリー村は、王都よりも天気が移ろいやすく、雨が多い。ただし、雨は降っても一時的な物がほとんどで、長雨というのはあまりなかった。
 ……今日はカーゴも来られないって言ってたし、もうお客様は来ないかもしれないわね。
 ――カラン、カラン。
 まさにそんなタイミングで、店内にお客様の来店を告げるベルが鳴り響いた。
「いらっしゃいませ。……あ、お客様またいらしてくださったんですね!」
 厨房から顔を出し、来店した男性客を一目見て、私は相好を崩した。
「ただいまお冷とおしぼりをお持ちします。お好きな席にお掛けになってお待ちください」
「……」
 男性は今日も帽子を目深に被り、その表情は窺えない。そうして今回も前回同様、無言のまま店内壁寄りのテーブル席に腰掛けた。

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