追放された悪役令嬢ですが、モフモフ付き!?スローライフはじめました

『私ね、炎天下の慣れない移動で脱水になりかけていたのよ。いけない事だとは思いつつ、目の前に積まれたこれを飲まずにはいられなかった。これを飲まなかったらきっと私、倒れてしまっていた』
 ……え? リリアーナの告白に首を捻る。
 だって、リリアーナは日焼けを嫌がって、「かったるい」と悪態を吐きながら馬車に乗り込んできたのではなかったか。
『お願いアイリーン、ここで私を見た事はどうかクラスの皆には黙っていて? いくら渇きに耐えられなかったからとはいえ、勝手に人様のものに手を付けただなんて皆にはとても言えない。その上、万が一にも泥棒の汚名まで着せられてしまっては、私はもう生きていけない』
 ……私の目がおかしいのか、本当のところは分からない。
 しかし、およよと泣き崩れるヒロインが与える破壊力たるや凄まじい。リリアーナのバックには悲壮感のブリザードがビュービューと吹きすさび、容赦なく私をヒロインをいたぶる悪役の如き気分にさせる。
 ゴクリとひとつ、唾を飲む。
『分かったわ、リリアーナ。私は今見た事に、口を噤む』
 リリアーナの言葉に絆された訳ではないが、かといってわざわざこれをクラス中に言い触らすつもりもなかった。
『ありがとうアイリーン! あなたは私の親友よ!』
 私の答えにリリアーナは満面の笑みを向けた。
『だけどリリアーナ、ひとつだけ……。この件をクラスの皆に言う必要はないけど、自分で養護の先生にはきちんと報告をして? 報告をしないまま数が合わないとなれば、騒ぎが大きくなってしまうから』
『……そうね』

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