追放された悪役令嬢ですが、モフモフ付き!?スローライフはじめました

 私は身を翻し、咄嗟にポケットの中の通信機のブザーを押す。そのまま逃げようとしたけれど、一足早く飛び掛かって来たエヴァンに床に引き倒された。
「キャァアッッ!!」
「お前に何が分かる!? 全てお前のせいだ! お前のせいで俺は取り巻きに逆戻りだっっ」
 エヴァンは私に馬乗りになると、般若の形相で喚き散らしながら、大きく拳を振り上げた。
 っ! 私は歯を食いしばり、瞼を瞑って衝撃に備えた。

 その瞬間、なにが起こったのか視界を塞いでいた私には分からなかった。
 だけど耳が、「バッターン」やら「ガッシャーンッ」やら、大きく響く衝突音を拾っていた。やがて周囲は、シンッと静まった。
 その直後、静寂を割って、私に向かって駆け寄ってくる足音がした。それは聞き慣れた、肉球と床が接触して立てる音――! 私は睫毛を震わせて、ゆっくりと瞼を開いた。
 目を開けると、私を見下ろすグリーンの双眸とぶつかった。グリーンの瞳が、痛ましげに私を見つめていた。
「……プリンス」
 私の声は掠れていた。プリンスは労わるように、柔らかな体を私に寄せて、ペロペロと頬を舐めた。

< 131 / 205 >

この作品をシェア

pagetop