追放された悪役令嬢ですが、モフモフ付き!?スローライフはじめました
私にはエヴァンの謝罪がその場しのぎの言い逃れとは思えなかった。なにより、来店したエヴァンがすぐに犯行に及ばずに一旦テーブルに着いたのは、客として振舞おうという思いのあらわれだったのではないだろうか。
顔を上げたエヴァンの目には、薄く涙の膜が浮かんでいた。
慌ててポケットからハンカチを取り出そうとしたら、横からカーゴの手が伸びてきて、私の手を止めた。驚いて見上げれば、カーゴは「不要だ」と言わんばかりに、首を横に振った。
「謝罪したからといって、全てが無になると思ったら大間違いだ。後悔するくらいなら、最初からしなければいいだけの事。アイリーン、これ以上こいつを甘やかす必要などない」
カーゴは取り付く島なく、厳しい声音で言い放つ。
「そもそも、お前は今回の行動に伴う責任をきちんと考えたか? お前がアイリーンを殴り、怪我を負わせていたらどうなっていた? 暴力沙汰は貴族社会がもっとも嫌う。お前は学園を退学になるばかりか、親父さんの家業も継げなくなっていただろう。そんな事も分からんのなら、警邏の留置場で頭を冷やした方がいい」
エヴァンは唇を真一文字に引き結び、硬い表情でカーゴの言葉を聞いていた。
「ってかカーゴよ、そこまで頭が回っていたら、そもそもアイリーンに殴りかかってねえから。こいつ自身が言ってたろ? 頭が真っ白になって、突発的にやっちまったってな」