追放された悪役令嬢ですが、モフモフ付き!?スローライフはじめました

「キャァアアッッ!!」
 ――ドサッ!
 ところがその次の瞬間、私は飛び掛かって来たアニキによって、地面に押し倒されていた。衝撃に息が詰まり、目の前が白黒した。
「テメェどうしてくれる!! 10万エーンがおじゃんになっちまったじゃねーか!?」
「ッ!」
 アニキは激昂して叫び、私の襟首を掴んで揺さぶった。首が締まり、苦しさに涙が滲む。
「オイ! なんとか言わねえか!!」
 アニキに掴んだ襟首をグッと持ち上げられて、その衝撃で反射的に目を閉じた。するとその時、瞑った瞼の裏側に大好きなグリーンの双対が鮮やかに浮かび上がった。
 透き通るグリーンは、カーゴの瞳のようにも思えたし、プリンスの瞳のようにも思えた。
「アイリーン――!」
 最初に耳が、聞き慣れたカーゴの声を拾う。次いで、霞む視界にぼんやりとカーゴの姿が浮かぶ。
 ……え? だけど次の瞬間には、カーゴの姿はプリンスに変わっていた。
「グゥワァアアアアアアッッ!」
 プリンスの咆哮を聞いたのと同時に、私に覆い被さっていた男が吹き飛ぶ。
 状況を理解するより先、気道から肺に一気に空気が流れ、私は激しく噎せ込んだ。
「ゲホッゲホッ!」
 鈍く打ち付けるような音や、なにかがぶつかるような音が聞こえていたけれど、いくらもせずにそれらの音は止んだ。

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