追放された悪役令嬢ですが、モフモフ付き!?スローライフはじめました
「……ありがとうプリンス。あなたのおかげよ、私はもう大丈夫」
プリンスを抱き締めて、グリーンの瞳に告げる。プリンスはジッと私を見つめ、最後に頬をひと舐めしてそっと顔を引いた。
「……う、うぅううっ。イテェよぉ……」
「アニキぃ……」
背後から男たちの呻き声が上がる。振り返れば、血を滲ませた男たちが地面に転がっていた。
「大変! 手当てをしないと!!」
「ガゥウウッ!」
私が男たちに駆け寄ろうとすれば、プリンスは不満げに嘶いて、私を抱く腕にギュッと力を込めた。
私にはプリンスが「手当などしなくていい」と「自業自得だ」と、そう言っているように感じた。
「……あなたの言いたい事は、よく分かるの。だけどね、たとえどんな悪人でも、私は目の前で痛みに苦しんでいる人がいたら見て見ぬ振りはできない。自己満足かもしれないけど、助けないで後悔するより、私は助けて後悔した方がずっといい」
私がグリーンの瞳をしっかりと見つめて告げれば、プリンスも強い目で私を見返した。私たちは互いに目線を逸らさぬまま見つめ合っていた。
「ガゥ」
先に折れたのはプリンスだった。プリンスは小さく嘶いて、そっと腕の力を緩めた。
「ありがとうプリンス! 私、ジェームズさんを呼んでくる! 大丈夫だから、あなたはここにいてね!」
私は目いっぱいの感謝を込めて、ギュッとプリンスを抱き締めてから、その懐を飛び出した。そのままジェームズさんの母屋へと一直線に駆けた。