追放された悪役令嬢ですが、モフモフ付き!?スローライフはじめました
私は母屋に着くと、ジェームズさんに掻いつまんで状況を説明した。
「現場は犯人のランタンで明るいので、このままで大丈夫です。ジェームズさん、こっちです!」
出してもらったタオルと救急箱を片腕に抱え、反対の手でジェームズさんの手を取って、事件現場へと走り出した。
「アイリーンさん、急ぎたいのは分かるが、如何せん年寄りはあんたのように速くは走れん」
「あ、すみません」
私はジェームズさんに言われ、慌てて速度を緩めた。
「なに、そう心配せんでも大丈夫だ。聞いた感じだとその三人は、おそらく隣町の便利屋の男らだ。本人らはなにを勘違いしてか、自分たちをヤクザなどと自称しとるがな。やつらはオツムが弱い分、体だけは頑丈にできている。ちょっとやそっと傷めつけられたからと、どうにもなりゃあせん」
カラカラとジェームズさんは笑った。そのあっけらかんとした様子に、私の焦燥感も少し薄らいだ。
「はい。それでジェームズさん、さっきも言いましたが現場には私を助けてくれたうわさの猛獣がいます。その大きさに驚くと思いますが、あの子は決して害獣なんかじゃないんです。賢くて優しい子で……」
ジェームズさんなら話せば分かってくれる。悪戯にプリンスを恐れ、駆逐しようとはしない。そう思いつつも、胸に若干の不安はあった。
「そんなのは分かっている。その猛獣は、あんたの命の恩人で、儂の農園の恩人でもあるんだ。たとえどんな恐ろし気な姿でも、儂は感謝こそすれ、どうこうしようなど欠片も思っとらんぞ」
ジェームズさんの好意的な反応に、私の杞憂はあっという間に吹き飛んだ。