追放された悪役令嬢ですが、モフモフ付き!?スローライフはじめました
――コツンッ。
っ!? 軽く頭を叩かれて、私は驚いて手が伸びてきた方を見上げた。
そうすれば、鋭いくらいに真剣なカーゴの瞳とぶつかった。触れれば切れそうなカーゴを前にして、私は言葉を失った。
「君は本当に分かっているのか? 男三人に一人で立ち向かうリスクを、その先にある結果を、君は一瞬でも考えたか? 無事に済んだからよかったものの、一歩間違えればどうなっていたか……」
カーゴの声に責める響きはなく、口調はむしろ穏やかだった。
「一歩間違えれば、……俺は君を失っていたかもしれないっ!」
だけど続きで、カーゴは悲痛に声を詰まらせた。
カーゴは苦し気に顔を歪め、私からスッと視線を外して両の拳を握り締めた。
私は雷に打たれたみたいな衝撃に震えながら、愕然として立ち竦んだ。愚かにも、私はカーゴに言われて初めて、自分の取った行動がどんなに軽率で浅はかなものだったのかに思い至ったのだ。
私の取った行動が、どんなにかカーゴの心を痛めたか……! 私は深い自責の念に駆られていた。
「……っ」
頭では謝らなければいけないと思うのに、唇は震えるばかりでまともな言葉を結ばない。だけど同時に、私は口先だけの「ごめんなさい」には、意味がないとも感じていた。心の底から私を心配して、私のために真剣に怒ってくれるカーゴ。その思いに誠心誠意応えるには、上辺をなぞらえた通り一遍の謝罪はあまりにも陳腐に思えた。