追放された悪役令嬢ですが、モフモフ付き!?スローライフはじめました
感極まった私は、溢れる思いのまま叫んでいた。私が口にしたのは呆れるくらい稚拙な謝罪の羅列だった。
だけどこれが、飾らない思いだった。
カーゴは少し驚いたように私を見下ろしていたけれど、すぐにクシャリと目を細くして微笑んだ。
「俺が君に呆れるなどあるわけがない。次から気を付ける、それを分かってくれたなら十分だ。俺にとって君以上に大事なものなどない、君が無事で本当によかった」
「カーゴ……!」
カーゴの胸にトンッと抱き締められて、私もカーゴの背中に腕を回してきつく抱き返した。
絶対的な安心感が私を包む。今宵の緊張や興奮も、その後の自責や後悔といった感情までもが、カーゴの腕の中にスーッと溶けていくような心地がした。
広い胸にスリッと右の頬を寄せれば、トクントクンと刻む鼓動が心地よく耳に響いた。
「……ふむ。こりゃ儂の出番はなさそうだな。それにしたって、あんたは相当に救護の心得があるようだ」
「ああ、ひと通りの応急処置は齧ってるぜ」
その時、カーゴの胸に押しあてていたのと反対の左耳が、ジェームズさんとルークの会話を拾う。
すっかり二人の世界に浸っていたが、ここはジェームズさんの農園で、なおかつ足元には犯人が瀕死で転がる緊急事態だ。私は一瞬で現状に思い至り、大慌てでカーゴの腕の中を飛び出した。