追放された悪役令嬢ですが、モフモフ付き!?スローライフはじめました

 羞恥で顔を真っ赤に染める私を、カーゴは余裕綽々の笑みで見下ろしていた。その余裕が悔しくはあるけれど、取り繕った表情を向けられるよりもずっといいと思った。
「こんなもんで十分だ。後は放っておけばその内に治る」
「こりゃ見事な処置だわ」
 つられて視線をやれば、ルークの手で既に負傷した三人の処置は終わっていた。
 綺麗に包帯が巻かれ、場所によっては添え木まであててある。アニキの無残に腫れ上がった顔も、きちんと血が拭われて、切れた口元にはテープが貼られていた。
「それじゃ、事情聴取といくか。ジェームズさん、すまんが場所を貸してくれるか」
「ああ、母屋の方にあがってくれ」
 ルークの求めに応じ、ジェームズさんは先導して母屋の方に足を向ける。途中で男たちの台車に空容器や農薬散布機、ランタンといった諸々を積み、その回収も忘れなかった。
「ほんじゃ、カーゴ。残りの一匹は頼んだぜ」
 言うが早いか、ルークは舎弟兄弟を引っ掴むと、両肩に乱暴に担ぎ上げた。
「ヴッ!」
「グッ!」
 二人の苦し気な呻き声を聞くに、なんだか少しだけ気の毒に思えた。
 カーゴは物凄く嫌そうに、「残りの一匹」を一瞥した。特大のため息の後、残るアニキの首根っこを引っ掴むと、ルークよりも乱暴に肩に担いだ。
「ァガッ!」
 アニキが衝撃に白目を剥いたのを私は見逃さなかった。

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