追放された悪役令嬢ですが、モフモフ付き!?スローライフはじめました
「おいアイリーン、大丈夫か!?」
遠い目をして物思いに意識を飛ばした私に、眉根を寄せたカーゴが迫る。
「あ……、ごめんなさい。ちょっとぼうっとしちゃってた」
「いや、不当な謹慎処分を言い渡されて気丈にしていろと言う方が難しい。とにかく、俺が寮舎まで送っていこう」
「違うのよ、カーゴ。ぼうっとしちゃってたのは少し考え事をしていただけで、謹慎のショックとかじゃないの。心配してくれてありがとうね」
「ならいいが……」
心配そうに私を覗き込むカーゴのグリーンの瞳の眩さに鼓動が跳ねる。同時に、悪役令嬢の私にこうも心を砕いてくれるその姿に、胸の奥、深いところがじんわりと熱くなった。
「あのね、心配してくれるカーゴにだから言うけど、私は今回の謹慎を嬉しくこそ思っても、悲しくは思っていないの。もっと言うと、私はこの日を待ってもいた」
……今ならば分かる。悪役令嬢をまっとうする事が『桃色ワンダーランド』の世界にアイリーン・オークウッドとして転生した私の宿命で、悪役令嬢を立派にまっとうしないことには、私に安寧の暮らしは訪れない。
ちなみに、追放後のアイリーン・オークウッドの動向は『桃色ワンダーランド』には描かれていない。
私は悪役令嬢の看板を掲げたまま学園から身を引いて、ひっそり田舎に移って第二の人生をのんびりと静かに過ごす。これが、悪役令嬢として転生した私が密かに温めてきた夢だ。
「これでやっと身を引ける」
意図せず、本音がポロリと漏れ出た。聞き付けたカーゴは驚きに目を見張った。
「……それはまた、ずいぶんと達観した発言だな」
カーゴが呟いた台詞に、内心でドキリとした。